重陽の菊
9月9日には三色の菊をいける。
「重陽の節句」または菊の節句ともいうが、奇数を尊ぶ日本では、奇数、つまり陽の数の一番大きな数字である9が重なる日ということで祝われた。もっとも、本来これは旧暦での話。
新暦では9月はまだまだ菊の盛りとは言えず、季節感が合わない。今年で言うと10月25日が旧暦の9月9日にあたるが、これなら納得できる。しかし、いけばな界では、新暦に合わせていける場合が多い。これは菊に限らず、3月3日の桃、5月5日の花菖蒲も同じである。これはなぜかと考えると、いけばなでは先取りが喜ばれるからかとも思える。まだ盛りでないころにいけると珍しく感じてもらえるので、そのまま新暦でいけているのではないだろうか。これはあくまで私の想像であるけれど。
さて、重陽の菊の花であるが、白、黄、赤の菊をいけるのであるが、三色の菊なのに五色をいけるという。
これは葉の緑を青、器の中の水を黒と捉えるところからきている。合わせて五色となるのだが、これは五行説につながる。五行説とは簡単にいうと、世の中は木、火、土、金、水の五つの元素がめぐることで成り立っているとする考え方である。五行の行は巡るという意味である。この五行は東西南北中央という方位や、色や音、また人体にも配置されているのだが、この五色をいける意味の一つとしては、世の中がうまく巡ってほしいという願いを表したものではないだろうか。
また、重陽には、菊水、菊酒というのも関係してくる。古来中国では、菊のエッセンスの入った水を飲むと長寿になるという「菊水伝説」というものがあり、それも含めて平安初期に伝わったとされている。菊水、菊酒をたしなんで、不老長寿を願う節句でもある。