枝ものを扱う No.3
桜も盛りが過ぎて、葉の緑が段々と目立つようになってきた。春はいろいろな花木が目を楽しませてくれてきたが、そろそろ、新緑の美しい季節の到来である。
先の二回は花の見たて、取り合わせといった基本的なところを取り上げてきたが、今回はもう少しいけばならしいもの、つまり木の枝の扱いについて少し触れたい。
モミジやななかまど、夏はぜ、どんな木にも枝振りと言ったものがある。
木の種類によっても違うし、また同じ種類の木でも中心付近に育った枝か、あるいは下の方に育った枝かによっても姿がずいぶん異なる。いけばなでは木を総称して枝もの、木ものというがいけるときにはそれぞれの木の生まれ育ちというものを大切に扱い、作品の中に自然の風情といったものを残すようにする。
具体的にいうと、松は松らしく、梅は梅らしくというように、それぞれの木の姿を生かして、真っ直ぐ伸びるものは真っ直ぐに、横に伸びる性質のものは横に伸びているようにいける。横に伸びる性質のものを縦にいけると見た目にも不自然である。枝ものを扱うときには初回で取り上げた見立ての部分がとても重要で、枝の表裏を見定めて“この枝はどのように育ってきた枝か”と常に想像力を働かせることがとても大切である。そして切り取られた枝をそのまま使うのではなく、いらない枝を切ったり、重なった枝は曲げて離したりと、形をきれいに整えたうえでいけていく。切り取られた枝はあくまでも木の一部であって、木全体の姿のように整ってはいない。だから人間の目と手で形を整えたうえで、バランスを考えながら枝を組み合わせていけあげる。
その際、枝や花をどれくらいの寸法の割合で組み合わせていくかということがある。
まずはメインとなる枝を選び器の口の広さや壷なら高さを目安に1.5倍から3倍までの間で寸法を決める。それと組み合わせる枝はそれより弱く働くものにし、寸法もはっきりと短いと分かる程度には切る。つまり枝のなかでの主従をつけてあげる。すると全体的にメリハリが利いて美しく感じられる。それから、その枝ものに草花を添える際にも、木と草花という差、ボリューム感の違いをはっきりと出してやる。木は大きく育ち、草花は下の方で少し伸びる、そんな自然の姿にも通じるいけかたをすると、目にもなじみやすい。
そうしていけられた花は実際にはそんな風景は存在しないにしても、どこか自然らしさが漂う作品になる。